第8回「新潟市が農業特区へ」(2014年5月放送)

 新潟市がこの春、農業特区に指定されました。そのことによって、様々な規制が緩和されたり、撤廃されたり、大規模な農業経営が推進されます。さらに、農業以外の業種との連携が加速したりすることと思います。

 しかし、ただ単に直売所や地元の食材を使った農家レストラン等を作っても、既に全国各地には魅力的な施設が数多くあり、それだけでは人は集まってくれないのではないでしょうか。

 私が考えるならば、施設を新しく作るのではなく、既にあるものを洗練するという手法が一番いいと思います。例えば、地域全体を公園と見なして、歴史的価値のあるもの、伝統的なもの、何気ない田んぼの景色などを基本的な資源として、そこに若干の手を入れ復元し、豊かな農村として守るとともに、観光・交流資源として使ってみてはどうでしょう。

 並木道、古い民家、河川、土水路、古い堰などを保全もしくは復元整備し、車は駐車場に置き、歩き、自転車、船などで地域を散策する。

 そして、そこに住む生き物にも着目し、「美しい農村」の雰囲気を楽しんでもらう。このように空間として地域を活用することによって、地域の活性化につなげていこうというイメージがいいのではないでしょうか。

 ただ、そこで重要なのは、施設は作っても、そこにいる人の意識・能力が追いついていかないと全く魅力の無いものになってしまうということです。新潟にはすばらしい観光資源と人間味溢れる人が眠っていると思います。そこで、特定の業種だけで事業を進めず、業界の枠を超えて、農業、商業、工業、NPO等の公益法人、市民団体、行政等が連携し、ソフト面の盛り上がり方策を考えることが重要だと思います。

 具体的には、造園業の方と一緒に農地を使って農業を体験できる公園を作ろうという取り組みを考えています。新津特産の柿を植えて、自由に木登りしたり、実を採ったりできる。そんな場所を創りたいと思っています。

 どんなにお金をかけてすばらしい建物を建てても、都会の人の心には響きません。なぜならそんなものを田舎に求めていないから。むしろ、非都会的な空間、土の匂い、生き物たちの声、そして人間味溢れる地元民との交流こそが求められているのではないでしょうか。まずは、箱物ありき・・・ではなく、まずは人間ありき・・・でいきましょう。