第12回「自然栽培との出会い」(2014年6月放送)

 「農業は草との闘いだな」これは農家になって1年目に痛烈に感じたことでした。我が家は、稲、柿、イチジク、大豆、トウモロコシなど色々な作物を育てています。稲のように春に耕して水を張るもの、大豆やトウモロコシのように耕すけれど水は張らないもの、柿やイチジクのように耕さないもの、それぞれ作物の好きな環境を農家は作り出して育てています。しかし、土があれば草は生えてきます。水を張れば水が好きな草、水が無くても乾燥が好きな草が生えてきます。絶妙のバランスで芽を出し、春草から夏草へ入れ替わり、冬には枯れていく様を見ると、自然の意思を感じることさえあります。

 農家の大先輩の話を聞くと、昔は田の草取りが大変で、朝から晩まで田んぼの中を這いずり回って、ひととおり取り終えると、また最初の田んぼに草が生えている…そんな繰り返しだったそうです。そこに除草剤なるものが登場して飛躍的に楽になり、田の草取りから解放された。という話を聞いて、戦後の日本の高度経済成長は、農業の機械化と農薬による効率化がもたらしたものだと感じたものでした。

 でもなぜ、農業の現場で使われる薬だけが、こんなにも悪者扱いされるのでしょうか。

 そんな時に出会ったのが、青森で無農薬・無肥料の自然栽培でリンゴを育てることに辿り着いた木村秋則さんという方です。最初は、肥料も・農薬も使わず農作物を育てるという手法に半信半疑でした。しかし、お話を聞き、青森のリンゴ畑を実際に訪問してみて、「よし!まずはやってみよう!」と、自然栽培を始めました。

 不思議なことに今まで草と闘っていたと感じていたのですが、この栽培法では、草と共生して作物が育っていきます。

 技術的には手探りの状態ですし、手間もかかり、収量も少なくなることが多いです。でも、育った作物は美味しいし、田んぼや畑がなんだか気持ちがいいのです。

 新潟には自然栽培を研究する会があり、全国で唯一、自然栽培を勉強できる専門学校もあります。その関係者みんなで栽培技術や経験を共有し、ゆくゆくは「種」も保存し、次世代に繋げていきたいと考えています。

 先進的な農業の流れとは逆行するようにも見えますが、こういった多様な農業が新潟の魅力を創造していくと確信しています。

 皆さんに選んでいただければ、また次の栽培へと繋がります。是非、直売所やレストランなどで見かけたら応援してくださいね。